増加関数とその逆関数のグラフの交点数 / 2018 名古屋大学・理系 第2問

問題

 a を 1 より大きい実数とする。このとき,次の問いに答えよ。

(1) 関数  y=a^x y=\log_a x のグラフの共有点は,存在すれば直線  y=x 上にあることを示せ。

(2) 関数  y=a^x y=\log_a x のグラフの共有点は 2 個以下であることを示せ。

(3) 関数  y=a^x y=\log_a x のグラフの共有点は 1 個であるとする。このときの共有点の座標と  a の値を求めよ。

解説の pdf も作りました。きれいなレイアウトで読みたい方はこちらをどうぞ。

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増加関数とその逆関数

(1)について

  y=a^x\mbox{ ……(A)},  y=\log_a x\mbox{ ……(B)} とおきます。

 f(x)=a^x とおくと(A)は  y=f(x)で,(B)は  x=f(y) です。これらは互いに逆関数の関係にあります。

要するにこの(1)で要求されているのはこういうことです。

 f(x) が増加関数であるとき, y=f(x) とその逆関数のグラフの交点はすべて直線  y=x 上にあることを示せ」

平均値の定理を使うと簡単に示せます。(A)と(B)を辺ごとに引くと

 y-x=f(x)-f(y)\mbox{ ……(C)}

 f(x) は連続かつ微分可能なので平均値の定理が使えて,次の式をみたす  z x y の間に存在します。

 f(x)-f(y)=(x-y)f'(z)=(x-y)a^z \log a\mbox{ ……(D)}

(C)(D)から  f(x)-f(y) を消去します。

 y-x=(x-y)a^z \log a

 y\ne x のときこれは  -1=a^z \log a となりますが, a>1 よりこれをみたす  a,  z は存在しません。
(A)と(B)が共有点をもつとき,その点はすべて  y=x 上にあります。証明終わり。

(2)について

(1)より(A)と  y=x の共有点が 2 個以下であることを示せば十分です。 a>1 より(A)のグラフは下に凸なので  y=x との交点は 2 個以下です。証明終わり。

(3)について

(3)も(A)と  y=x で考えれば十分です。これらが接するときの  a の値と接点の座標を求めます。

 h(x)=x とおきます。 y=f(x) y=h(x) x=t で接する条件は  f(t)=h(t) かつ  f'(t)=h'(t) です。

 a^t=t\mbox{ ……(E)},\, a^t \log a=1\mbox{ ……(F)}

これは  a t の連立方程式です。文字消去を考えましょう。

まず(E)(F)から  a^t を消去します。

 t\log a=1\Leftrightarrow \log a^t=1\Leftrightarrow a^t=e\mbox{ ……(G)}

(E)(G)から  t=e がいえて,接点は「 (e,\, e)」です。

(G)に  t=e を代入すると  a^e=e より「 a=e^{\frac{1}{e}}」が言えます。これで全部解けました。

f(x) が増加関数でないとき

(1)で示した「 y=f(x) とその逆関数のグラフの交点はすべて直線  y=x 上にある」が言えるのは  f(x) が増加関数のときだけです。減少関数のときは言えません。

 f(x) が減少関数のときも(C)(D)までは言えます。

\begin{align*}
\begin{cases}
y-x=f(x)-f(y)\\[3pt]
f(x)-f(y)=(x-y)f'(z)
\end{cases}
\end{align*}

 f(x)-f(y) を消去すると  y-x=(x-y)f'(z) になります。 y\ne x のときこれは  f'(z)=-1 になります。

減少関数だったらこれをみたす  z が存在する可能性がありますよね。(1)のように矛盾を導くことはできないので, y=x 上以外にも共有点をもつ可能性があります。

ちなみに「交点は  y=-x 上にある」は言えません。たとえば  y=-x-1 は減少関数です。

 x+y=-1 と変形できることからわかるように,逆関数は元の関数と同じなので交点はすべて  y=-x-1 上にあります。

 y=f(x) y=f^{-1}(x) の問題を  y=f(x) y=x で議論するときがあるかと思いますが,そういうときは「 f(x) は増加関数なので」を必ず書きましょう。


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