問題
を 1 より大きい実数とする。このとき,次の問いに答えよ。
(1) 関数 と のグラフの共有点は,存在すれば直線 上にあることを示せ。
(2) 関数 と のグラフの共有点は 2 個以下であることを示せ。
(3) 関数 と のグラフの共有点は 1 個であるとする。このときの共有点の座標と の値を求めよ。
解説の pdf も作りました。きれいなレイアウトで読みたい方はこちらをどうぞ。
増加関数とその逆関数
(1)について
, とおきます。
とおくと(A)は で,(B)は です。これらは互いに逆関数の関係にあります。
要するにこの(1)で要求されているのはこういうことです。
「 が増加関数であるとき, とその逆関数のグラフの交点はすべて直線 上にあることを示せ」
平均値の定理を使うと簡単に示せます。(A)と(B)を辺ごとに引くと
は連続かつ微分可能なので平均値の定理が使えて,次の式をみたす が と の間に存在します。
(C)(D)から を消去します。
のときこれは となりますが, よりこれをみたす , は存在しません。
(A)と(B)が共有点をもつとき,その点はすべて 上にあります。証明終わり。
(2)について
(1)より(A)と の共有点が 2 個以下であることを示せば十分です。 より(A)のグラフは下に凸なので との交点は 2 個以下です。証明終わり。
(3)について
(3)も(A)と で考えれば十分です。これらが接するときの の値と接点の座標を求めます。
とおきます。 と が で接する条件は かつ です。
これは と の連立方程式です。文字消去を考えましょう。
まず(E)(F)から を消去します。
(E)(G)から がいえて,接点は「」です。
(G)に を代入すると より「」が言えます。これで全部解けました。
f(x) が増加関数でないとき
(1)で示した「 とその逆関数のグラフの交点はすべて直線 上にある」が言えるのは が増加関数のときだけです。減少関数のときは言えません。
が減少関数のときも(C)(D)までは言えます。
\begin{align*}
\begin{cases}
y-x=f(x)-f(y)\\[3pt]
f(x)-f(y)=(x-y)f'(z)
\end{cases}
\end{align*}
を消去すると になります。 のときこれは になります。
減少関数だったらこれをみたす が存在する可能性がありますよね。(1)のように矛盾を導くことはできないので, 上以外にも共有点をもつ可能性があります。
ちなみに「交点は 上にある」は言えません。たとえば は減少関数です。
と変形できることからわかるように,逆関数は元の関数と同じなので交点はすべて 上にあります。
と の問題を と で議論するときがあるかと思いますが,そういうときは「 は増加関数なので」を必ず書きましょう。