平野塾@吉祥寺

おもに数学について書きます

重み付き相加・相乗平均の不等式 / 2018 トルコ ジュニア

問題概略

任意の正の実数  x,  y,  z に対して次の不等式が成り立つような正の実数  c をすべて求めよ。


 \dfrac{x^3y+y^3z+z^3x}{x+y+z}+\dfrac{4c}{xyz}\geqq 2c+2


https://artofproblemsolving.com/community/c6h1764789p11549921

トルコのジュニア数学オリンピックの問題です。「任意の~」をまともに相手にするのは面倒なので必要条件と十分条件にわけて考えます。
解説の pdf も作りました。きれいなレイアウトで読みたい方はこちらをどうぞ。

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必要条件

まずは実験です。 x=y=z の場合を考えます。

 x^3+\frac{4c}{x^3}\geqq 2c+2

相加相乗で左辺の最小値を求めます。

 x^3+\frac{4c}{x^3}\geqq 2\sqrt{x^3\cdot \frac{4c}{x^3}}=4\sqrt{c}

等号は  x=(4c)^{\frac{1}{6}} のとき成立するので最小値は  4\sqrt{c} です。

これが  2c+2 以上であることが必要です。 \sqrt{c}=d\, (>0) とおいて整理します。

 4d\geqq 2d^2+2\Leftrightarrow (d-1)^2\leqq 0

 d=1 より  c=1 が必要だとわかりました。

十分条件

分母をはらって整理

 c=1 のとき与式は次のようになります。

 \dfrac{x^3y+y^3z+z^3x}{x+y+z}+\dfrac{4}{xyz}\geqq 4\mbox{ ……(1)}

相加相乗が使えそうな形ですよね。

 \text{(左辺)}\geqq 2\sqrt{\dfrac{x^3y+y^3z+z^3x}{x+y+z}\cdot\dfrac{4}{xyz}}
=4\sqrt{\dfrac{x^3y+y^3z+z^3x}{(x+y+z)xyz}}

 \sqrt{} の中身が 1 以上であることを証明すれば,十分性の証明になります。

分母をはらって整理しておきます。

\begin{align*}
&\frac{x^3y+y^3z+z^3x}{(x+y+z)xyz}\geqq 1\\[6pt]
&\Leftrightarrow x^3y+y^3z+z^3x\geqq (x+y+z)xyz=x^2yz+xy^2z+xyz^2\mbox{ ……(2)}
\end{align*}

重み付き相加・相乗平均の不等式

(2)の類題を探したところ,『獲得金メダル! 国際数学オリンピック メダリストが教える解き方と技』(小林一章,朝倉書店)で次の問題をみつけました。

 x^4y+y^4z+z^4x\geqq x^2y^2z+y^2z^2x+z^2x^2y\quad (x,\, y,\, z\geqq 0)

p. 8 の「重み付き相加・相乗平均の不等式」のところです。これを参考に重み付き相加相乗で解きます。


「重み付き相加相乗とはなんぞや」という人が多いと思うので,3 変数の場合について説明します。

 a,  b,  c が 0 以上のとき  p+q+r=1 をみたす正の実数  p,  q,  r に対して次の不等式が成立します。等号成立条件は  a=b=c です。

 pa+qb+rc\geqq a^p b^q c^r

この不等式を使って(2)の右辺の項を 1 つずつ処理していきます。ベースになる式はこれです。

 p\cdot x^3y+q\cdot y^3z+r\cdot z^3x\geqq (x^3y)^p (y^3z)^q (z^3x)^r=x^{3p+r} y^{p+3q} z^{q+3r}\mbox{ ……(3)}

右辺が  x^2yz になる  p,  q,  r を求めます。

 3p+r=2,\, p+3q=1,\, q+3r=1

 \therefore p=\frac{4}{7},\, q=\frac{1}{7},\, r=\frac{2}{7}

この  p,  q,  r を(3)に代入します。

 \dfrac{4}{7}x^3y+\dfrac{1}{7}y^3z+\dfrac{2}{7}z^3x\geqq x^2yz\mbox{ ……(4)}

 x,  y,  z を入れ替えると  xy^2z,  xyz^2 の不等式も導けます。

 \dfrac{2}{7}x^3y+\dfrac{4}{7}y^3z+\dfrac{1}{7}z^3x\geqq xy^2z\mbox{ ……(5)}

 \dfrac{1}{7}x^3y+\dfrac{2}{7}y^3z+\dfrac{4}{7}z^3x\geqq xyz^2\mbox{ ……(6)}

(4)~(6)を辺ごとに足すと(2)になります。

十分性の証明

十分性の証明に入ります。「(4)(5)(6)を導く」→「足して(2)を作る」の部分は割愛。
(2)を使って(1)の左辺を評価します。

 \text{((1)左辺)} \geqq 2\sqrt{\dfrac{x^3y+y^3z+z^3x}{x+y+z}\cdot\frac{4}{xyz}}
\geqq 2\sqrt{4}=4=\text{((1)右辺)}

 c=1 の十分性が証明できました。求める  c は 1 のみです。

0以上の数5個の和は6以下 /「算数にチャレンジ!!」第1142問

問題概略

0 以上の 5 つの整数  a,  b,  c,  d,  e があります。
 a+b+c+d+e は 6 以下であるとき, (a,\, b,\, c,\, d,\, e) は何通りあるでしょうか。

http://www.sansu.org/used-html/index1142.html

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ボールと仕切りの順列

 a+b+c+d+e=k\ (0\leqq k\leqq 6) のとき, (a,\, b,\, c,\, d,\, e) k 個のボールと 4 個の仕切りの順列と同じ数だけあって  {}_{k+4}\mathrm{C}_4 通り。

これの和が答えです。462 通りですね。

 ans=\sum_{k=0}^6 {}_{k+4}\mathrm{C}_4=\mathbf{462}

 f=6-(a+b+c+d+e) とおいて「〇〇以下」を等式に直す解法も有名です。

 a+b+c+d+e+f=6,\, a\geqq 0,\, b\geqq 0,\, c\geqq 0,\, d\geqq 0,\, e\geqq 0,\, f\geqq 0

 (a,\, b,\, c,\, d,\, e,\, f) は 6 個のボールと 5 個の仕切りの順列と同じ数だけあります。

 ans={}_{6+5}\mathrm{C}_5={}_{11}\mathrm{C}_5=\mathbf{462}

おまけ:動的計画法

動的計画法で解いてみました。
0 以上の整数  n 個の組で和が  s のものが  dp(n,\, s) 個あるとします。

 n-1 個目の数までの和が  i\ (0\leqq i\leqq s) の組は  dp(n-1,\, i) 個です。
このとき  n 個目の数は  s-i と決まるので  n 個の数の組も  dp(n-1,\, i) 個です。

 dp(n,\,  s)=\sum_{i=0}^s dp(n-1,\, i)

求める個数は  \displaystyle\sum_{i=0}^6 dp(5,\, i)=dp(6,\, 6) です。
計算にはmathematicaを使いました。

  In[]:= AbsoluteTiming[
    dp[1, s_] = 1;
    dp[n_, s_] := dp[n, s] = Sum[dp[n - 1, i], {i, 0, s}];
    ans = dp[6, 6]]
   
  Out[]= {0.0000543, 462}

三角方程式,tanθ=t / 2020 一橋大学

問題

 a を定数とし, 0\leqq \theta < \pi とする。
方程式  \tan 2\theta+a\tan\theta=0 をみたす  \theta の個数を求めよ。

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 \tan \theta=t

問題文には  0\leqq \theta < \pi とありますが, \tan \theta が定義されない  \theta=\frac{\pi}{2} \tan 2\theta が定義されない  \theta=\frac{\pi}{4},  \frac{3}{4}\pi を除いて考えます。

 0\leqq \theta < \frac{\pi}{4},\, \frac{\pi}{4}< \theta< \frac{\pi}{2},\, \frac{\pi}{2}< \theta< \frac{3}{4}\pi,\, \frac{3}{4}\pi< \theta<\pi\mbox{ ……(1)}

 \tan \theta=t とおくと  t の変域は  \pm 1 以外のすべての実数で, t \theta の対応は一対一です。
 \tan 2\theta=\frac{2t}{1-t^2} から与式は次のように書き直せます。

\begin{align*}
\frac{2t}{1-t^2}+at=0 &\Leftrightarrow 2t+at(1-t^2)=0\\
&\Leftrightarrow t(a+2-at^2)=0\\
&\Leftrightarrow t=0\mbox{ ……(2)}\ \text{または}\ at^2=a+2\mbox{ ……(3)}
\end{align*}

 t=\pm 1 はこれらをみたさないので  \theta の個数は次のようにして求められます。

 (\text{(2)をみたす$\theta$の個数})+(\text{(3)をみたす$\theta$の個数})-(\text{(2)(3)を同時にみたす$\theta$の個数})

計算に戻りましょう。

(ア) a=0 のとき(3)は成立しません。(2)より  \theta=0 なので与式をみたす  \theta は 1 個です。

(イ) a=-2 のとき(3)は  t^2=0 になって(2)と同値です。(ア)と同様に  \theta は 1 個。

(ウ) a\ne 0,\, -2 のとき(3)は  t^2=\frac{a+2}{a} になります。

(a)  \frac{a+2}{a}< 0 つまり  -2< a< 0 のとき(3)をみたす  \theta は存在しません。与式をみたす  \theta は 1 個です。

(b)  \frac{a+2}{a}>0 つまり  a< -2,\, 0< a のとき(3)をみたす  \theta は 2 個で,どちらも 0 ではありません。(2)から得られる  \theta=0 とあわせて与式をみたす  \theta 2+1=3 個です。

一旦,表にまとめます。

f:id:variee:20211125104451p:plain

 \theta の個数は 1 個か 3 個です。

  •  -2\leqq a\leqq 0 のとき 1 個
  •  a< -2,\, 0< a のとき 3 個

別解釈での解答

 a=0 のとき与式は  \tan 2\theta=0\mbox{ ……(4)} になります。

 0\leqq \theta < \pi から  \tan 2\theta が定義されない  \theta=\frac{\pi}{4},  \frac{3}{4}\pi を除いた範囲でこれを解くと
 \theta=0,\, \frac{\pi}{2} になります。

(4)は  \tan\theta を含まないので  \theta=\frac{\pi}{2} も解になることに注意してください。
(2)の  \theta=0 とあわせて与式をみたす  \theta は 2 個です。

式中に  \tan\theta とある以上, \theta=\frac{\pi}{2} を除いて考えるのが自然ですが,問題文をこのように解釈すると解は次のようになります。

  •  -2\leqq a< 0 のとき 1 個
  •  a=0 のとき 2 個
  •  a< -2,\, 0< a のとき 3 個