無限小数を2倍したときの小数部分 /「算数にチャレンジ!!」第1153問

問題概略

次のような性質をもつ数  x あります。

  • 0 より大きく 1 より小さい
  •  x に 2 を奇数回かけると小数部分は  0.5 より大きく 1 より小さくなる
  •  x に 2 を偶数回かけると小数部分は 0 より大きく  0.5 より小さくなる

 x を求めてください。

http://www.sansu.org/used-html/index1153.html

解説の pdf も作りました。きれいなレイアウトで読みたい方はこちらをどうぞ。

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2 進小数で考える

 x を 2 進小数であらわします。

 x=\sum_{k=1}^\infty \frac{a_k}{2^k}=\frac{a_1}{2}+\frac{a_2}{2^2}+\frac{a_3}{2^3}+\cdots\quad (a_k=0\, \textit{or}\ 1)

 x は無限小数です x が小数第  n 位で終わる有限小数だったら 2 を  n 回以上かけると整数になって条件をみたしません。

また,あるところからずっと 1 が並ぶことはありません
10 進法で  0.999\cdots_{(10)}=1 がいえるように 2 進法では  0.01111\cdots_{(2)}=0.1_{(2)} などがいえて, x が有限小数になってしまうからです。

以下, x の小数部分を  \left\{x\right\}=x-\lfloor x\rfloor であらわします。

 x に 2 を 0 回かけた  x の小数部分は 0 より大きくて  0.5 より小さいので

 0< \left\{x\right\}=\left\{\frac{a_1}{2}+\frac{a_2}{2^2}+\frac{a_3}{2^3}+\cdots\right\}< \frac{1}{2}

 a_1=1 はこれをみたさないので  a_1=0 です。

 2x=a_1+\dfrac{a_2}{2}+\dfrac{a_3}{2^2}+\dfrac{a_4}{2^3}+\cdots の条件は

 \frac{1}{2}< \left\{2x\right\}=\left\{\frac{a_2}{2}+\frac{a_3}{2^2}+\frac{a_4}{2^3}+\cdots\right\}< 1\mbox{ ……(1)}

 \dfrac{a_3}{2^2} から先の項の和は初項  \dfrac{1}{2^2},公比  \dfrac{1}{2} の無限等比級数を使って上から評価できます。

 0\leqq\frac{a_3}{2^2}+\frac{a_4}{2^3}+\cdots\leqq \frac{1}{2^2}+\frac{1}{2^3}+\cdots=\frac{1}{2^2}\cdot \frac{1}{1-\frac{1}{2}}=\frac{1}{2}

右の等号は  a_3=a_4=\cdots=1 のとき成立しますが,これはありえません。

 \therefore 0\leqq\frac{a_3}{2^2}+\frac{a_4}{2^3}+\cdots<\frac{1}{2}\mbox{ ……(2)}

 a_2=0 のとき(1)(2)は両立しないので  a_2=1 です。

 a_3 以降についても同様です。「(1)(2)にあたる式を書く→両立する条件を求める」を繰り返します。

 a_{2m-1}=0,\, a_{2m}=1

 x は初項  \frac{1}{4},公比  \frac{1}{4} の無限等比級数です。

 x=\frac{1}{2^2}+\frac{1}{2^4}+\frac{1}{2^6}+\cdots=\frac{1}{4}\cdot \frac{1}{1-\frac{1}{4}}=\mathbf{\frac{1}{3}}

「偶数回」に「0 回」を含めないことにすると  a_1=1 なので  x=\frac{5}{6} も解になります。

 x=\frac{1}{2}+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{2^4}+\frac{1}{2^6}+\cdots=\frac{1}{2}+\frac{1}{3}=\mathbf{\frac{5}{6}}

ただ,この解釈はちょっと無理があると思うので,別解を考えるにあたって「偶数回」は「0 回」を含むものとします。

2倍は左シフト

「2 倍して小数部分をとる」は「左シフト→整数部分を捨てる」と同じです。

\begin{align*}
0.a_1 a_2 a_3 a_4\cdots_{(2)}\,&\to\, a_1.a_2 a_3 a_4 a_5\cdots_{(2)}\,\to\,0.a_2 a_3 a_4 a_5\cdots_{(2)}\\
&\,\to\, a_2.a_3 a_4 a_5 a_6\cdots_{(2)}\,\to\, 0.a_3 a_4 a_5 a_6\cdots_{(2)}\\
&\,\to\, \cdots
\end{align*}

あるところからずっと 1 が並ぶ数は考えないので,小数部分が  \frac{1}{2} 以上になるかどうかは小数第 1 位で決まって  a_{2m-1}=0,  a_{2m}=1 はすぐにわかります。

周期性

 \left\{x\right\},  \left\{2^2x\right\} の条件はそれぞれ次のようになります。

 0< \left\{\displaystyle\frac{a_1}{2}+\frac{a_2}{2^2}+\frac{a_3}{2^3}+\cdots\right\}< \dfrac{1}{2}

 0< \left\{\displaystyle\frac{a_3}{2}+\frac{a_4}{2^2}+\frac{a_5}{2^3}+\cdots\right\}< \dfrac{1}{2}

違うのは添字の初期値だけです。無限和であることも考えると  a_1=a_3=\cdots=0 がいえます。

同様に  \left\{2x\right\},  \left\{2^3x\right\} の条件から  a_2=a_4=\cdots=1 もいえます。


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