数学塾variée@吉祥寺

数学塾の中の人の日記

2018 China Northern (grade 10) 第2問

2018 China Northern Math Olympiad の第 2 問を解きました。grade 10 とあったので高校1年生くらいが対象なんでしょうか? ジュニア大会みたいなものだろうと思います。

0 以上の実数  a,\, b,\, c は次の等式をみたす。
 a^2+b^2+c^2+ab+\frac{2}{3}ac+\frac{4}{3}bc=1

 a+b+c の最大値と最小値を求めよ。

https://artofproblemsolving.com/community/c6h1680069p10709496

与式は回転楕円面です。これと平面  a+b+c=k が共有点をもつような  k の最大値と最小値を求めるために「2次曲線の標準化」の要領で与式を変形していきます。

3 通りの方法で解きました。

  1. 置き換えていって,2次方程式の実数解条件に帰着させる
  2. 円と直線が共有点をもつ条件に帰着させる
  3. ラグランジェの未定乗数法で答えを出した後,平方完成でごまかす

pdf を置いておくので,興味のある人は見てみてください。

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2018 AIME 第11問

2018年の AIME の第11問を解きました。

 3^n を 143 進法であらわしたとき,下 2 桁が 01 になるような自然数  n の最小値を求めよ。

https://artofproblemsolving.com/community/c5h1604138p9995346

与えられた条件を合同式を使ってあらわすと,こうなります。

 3^n\equiv 1\pmod{143^2}

これだと法が大きすぎてお手上げですが, 3^n-1\equiv 0\pmod{143^2} と変形して,

 3^n-1 143^2=11^2\cdot 13^2 で割り切れる」

と解釈するとだいぶ易しくなります。この条件は次と同値です。

 3^n-1\equiv 0\pmod{11^2} かつ  3^n-1\equiv 0\pmod{13^2}

これをどう処理するかは pdf を見てください。
一旦  \bmod\, 13 で考えた後,二項定理を使って  \bmod\, 13^2 に直したりします。

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要するに  p, q を互いに素な数として

 x pq で割った余りは 1」
=「 x-1 pq で割り切れる」
=「 x-1 p でも  q でも割り切れる」

と変形して解いたわけです。「余り0」は「余り1」よりずっと扱いやすい,という問題でした。

CloudLaTexを使ってみた

web ブラウザ上で TeX の文書を作れる CloudLaTex を使ってみました。

cloudlatex.io

CloudLaTex のいいところ

web ブラウザ上ですべての作業ができる

今回,CloudLaTex を使った最大の理由がこれです。
あるスタイルファイルが windows ではうまく動くのに,mac ではフォントまわりのエラーをはきまって動きませんでした。
直すのが面倒だったのでためしに CloudLaTex でやってみたらすんなりいきました。
手元の PC の環境を整えなくてすむのは助かります。

スタイルファイルが充実している

デフォルトで emath, listings, jlisting, TikZ, BXjscls に対応。
otf, amsmath, amssymb, framed, fancybox, fancyhdr, geometry も \usepackage{} するだけで使えました。
自作のスタイルファイルをアップロードして使うこともできました。

Dropbox と連携できる

バックアップ先に dropbox が指定できて安心。
ファイルの公開,共有も楽です。

無料

お金払いたいんですが,今のところ有料プランはないようです。

ローカルな TeX に負けるところ

キーボードショートカットやマクロが使えない

一部のコマンドは補完してくれますが,web ブラウザへの入力は基本的に google 日本語入力などの IME による入力です。さすがに IDE にはかないません。

カッコや環境などを閉じてくれたり,よく使う命令をマクロに登録してキーボードショートカットで入力したりといったことはできません。

一部の文字が使えない

これは CloudLaTex の問題ではなく,unicode の問題らしいのですが,
otf.sty で重宝する囲みつき文字(\ajKakkoroman{}など)や略字(\ajLig{})の中に使えないものがありました。

どんな書類を作ったか

2017年のトルコのジュニア数オリ第1問の解答を作りました。

 3^a+3^b+3^c が平方数となるような自然数  a,\, b,\, c の組をすべて求めよ。
https://artofproblemsolving.com/community/c6h1560944p9543530

ローカル環境とほぼ同じものができました。
f:id:variee:20190211031450j:plain

pdf も置いておくので,興味のある人は見てみてください。A4 で作ってあります。
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mod 8 で考えると楽なのですが,「平方数→ mod 8 で考えよう」という発想はできなかったので,mathematica で実験して答えを予想した上で解きました。
この解法の他,「はじめから mod 8 で考えたらどうなるか」「普通の中高生に解かせるとしたらどう改題するか」も書いてあります。

2014新潟大学/確率

2014年の新潟大学の確率の問題について書きます。普通に数えても解けますが,20 と 30 が 2, 5, 10 の倍数であることを使うと楽に解けます。

A の箱には 1 から 20 までの整数が 1 つずつ書かれた 20 枚のカードが入っている。

B の箱には 1 から 30 までの整数が 1 つずつ書かれた 30 枚のカードが入っている。

A, B の箱から 1 枚ずつカードを取り出し,取り出した 2 枚のカードに書かれた整数の和を X とおく。このとき,次の問いに答えよ。

(1) X が 2 の倍数となる確率を求めよ。

(2) X が 2 の倍数であるが 5 の倍数でない確率を求めよ。

(3) X が 5 の倍数となる確率を求めよ。

(4) X が 2 の倍数にも 5 の倍数にもならない確率を求めよ。

A, Bから取り出した数字を a, b であらわして,X = k となる確率を P(k) であらわします。各問の答えは順に
 P(2),\, P(2)-P(10),\, P(5),\, 1-P(2)-P(5)+P(10)
です。

P(5) の計算

P(5) を求めてみましょう。A, Bのカードを5で割った余りでグループ分けします。
\begin{align*}
&A_0=\left\{5,\, 10,\, 15,\, 20\right\},\,B_0=\left\{5,\, 10,\, 15,\, 20,\, 25,\, 30\right\},\,\\
&A_1=\left\{1,\, 6,\, 11,\, 16\right\},\,B_1=\left\{1,\, 6,\, 11,\, 16,\, 21,\, 26\right\},\,\\
&\quad \cdots\\
&A_4=\left\{4,\, 9,\, 14,\, 19\right\},\,B_4=\left\{4,\, 9,\, 14,\, 19,\, 24,\, 29\right\}
\end{align*}

20, 30 は 5 の倍数なので,どのグループも同じ個数の要素をもちます。

「A0 と B0 から各 1 枚」「A1 と B4 から各 1 枚」……のように選ぶと X=a+b は 5 の倍数になります。どの a に対しても b が同じ個数選べることに注目しましょう。

  • a はなんでもよい(確率1)
  • b は a に応じて選べる (確率 1/5)

これらをかけて

 P(5)=1\cdot \dfrac{1}{5}=\dfrac{1}{5}

同じように考えると

 P(2)=1\cdot \dfrac{1}{2}=\dfrac{1}{2},\, P(10)=1\cdot \dfrac{1}{10}=\dfrac{1}{10}

あとはこれらを足し引きすればよく,各問の答えは次のようになります。

 \dfrac{1}{2},\, \dfrac{2}{5},\, \dfrac{1}{5},\, \dfrac{2}{5}

普通に数えるなら

(a, b) は 20 x 30 = 600 通りあり,条件をみたす組を全部書き出すのは現実的ではありません。適当に記号でおいて数えます。P(10) を求めてみましょう。

X=10 となるのは (a, b) = (k, 10-k) のときです。

 1\leqq a\leqq 20,\, 1\leqq b\leqq 30 より  1\leqq k\leqq 9 なので,これは 9 通り。

以下同様で,次のような組があります。

  • (k, 20-k) (1 ≦ k ≦ 19)
  • (k, 30-k) (1 ≦ k ≦ 20)
  • (k, 40-k) (10\ ≦ k ≦ 20)
  • (20, 30)

全部で 9+19+20+11+1=60 通りあるので

 P(10)=\dfrac{60}{600}=\dfrac{1}{10}

P(5) も同じ要領で求められますが,場合分けが大変です。ここは剰余に注目したいところです。

2017杏林大学/問題3(2)

今日の授業で使った問題について書きます。2017杏林大学医学部・問題3(2)の一部です。

正の実数 x に対して,下記極限で定義される関数を f(x) とする。

 f(x)=\displaystyle\lim_{a\to 2}\dfrac{\cos ax-\cos 2x}{a^2+a-6}

x>0 の範囲で y=f(x) のグラフが直線 y=ax+b と共有点をもたない条件を求めよ。

f(x) の求め方

まずは f(x) を求めます。赤本では分子に対して和積公式を使っていましたが,私なら微分係数の定義を使います。分母,分子を

 g(a)=a^2+a-6,\, h(a)=\cos ax-\cos 2x

とおきます。g(2) = h(2) = 0 から

 f(x) =\displaystyle\lim_{a\to 2}\dfrac{h(a)}{g(a)}=\displaystyle\lim_{a\to 2}\dfrac{h(a)-h(2)}{g(a)-g(2)}

 =\displaystyle\lim_{a\to 2}\dfrac{\dfrac{h(a)-h(2)}{a-2}}{\dfrac{g(a)-g(2)}{a-2}}=\dfrac{h'(2)}{g'(2)}

g'(a)=2a+1, h'(a)=-x sin ax を使って

 f(x)=-\dfrac{1}{5}x\sin 2x

極限計算において「微分係数の定義を使う」は気づきにくいです。私も受験生時代,何度もひっかかりました。

共有点をもたない条件

次は x>0 の範囲で直線 y=ax+b と共有点をもたない条件を求めます。「辺々引いて微分」で解くのはつらそうなので,ここはグラフを考えます。
y=f(x) のグラフは y=x/5, y=-x/5 を補助線として利用すれば微分なしで描けます。

f:id:variee:20171031214116p:plain

共有点をもたない条件は「直線 y=ax+b が領域  x>0,\, -\dfrac{x}{5}\leqq y\leqq \dfrac{x}{5} と共有点をもたないこと」です。
これは次のように言い換えられます。

  • 「x > 0 でつねに ax+b > x/5」または
  • 「x > 0 でつねに ax+b < -x/5」

移項して最大最小問題に帰着させましょう。

  • 「x > 0 でつねに (a - 1/5)x + b > 0」または
  • 「x > 0 でつねに (a + 1/5)x + b < 0」

ここまでくればあとは簡単ですね。求める条件は

「b = 0 かつ |a| > 1/5」または「b > 0 かつ a ≧ 1/5」または「b < 0 かつ a ≦ -1/5」

解答欄は「a > □ かつ b > □」または「a < □ かつ b < □」という形式になっていて,正しい答えは記入できません。空気を読んで 0 と 1/5, -1/5 を書き込んで終了です。

生徒の感想は「気づけば簡単ですね」でした。「知ってれば」「気づけば」簡単かもしれませんが,本番では結構気づかないだろうと思います。

杏林大学(医学部) (2018年版大学入試シリーズ)

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