問題概略
任意の正の実数 , , に対して次の不等式が成り立つような正の実数 をすべて求めよ。
https://artofproblemsolving.com/community/c6h1764789p11549921
トルコのジュニア数学オリンピックの問題です。「任意の~」をまともに相手にするのは面倒なので必要条件と十分条件にわけて考えます。
解説の pdf も作りました。きれいなレイアウトで読みたい方はこちらをどうぞ。
必要条件
まずは実験です。 の場合を考えます。
相加相乗で左辺の最小値を求めます。
等号は のとき成立するので最小値は です。
これが 以上であることが必要です。 とおいて整理します。
より が必要だとわかりました。
十分条件
分母をはらって整理
のとき与式は次のようになります。
相加相乗が使えそうな形ですよね。
の中身が 1 以上であることを証明すれば,十分性の証明になります。
分母をはらって整理しておきます。
\begin{align*}
&\frac{x^3y+y^3z+z^3x}{(x+y+z)xyz}\geqq 1\\[6pt]
&\Leftrightarrow x^3y+y^3z+z^3x\geqq (x+y+z)xyz=x^2yz+xy^2z+xyz^2\mbox{ ……(2)}
\end{align*}
重み付き相加・相乗平均の不等式
(2)の類題を探したところ,『獲得金メダル! 国際数学オリンピック メダリストが教える解き方と技』(小林一章,朝倉書店)で次の問題をみつけました。
p. 8 の「重み付き相加・相乗平均の不等式」のところです。これを参考に重み付き相加相乗で解きます。
「重み付き相加相乗とはなんぞや」という人が多いと思うので,3 変数の場合について説明します。
, , が 0 以上のとき をみたす正の実数 , , に対して次の不等式が成立します。等号成立条件は です。
この不等式を使って(2)の右辺の項を 1 つずつ処理していきます。ベースになる式はこれです。
右辺が になる , , を求めます。
この , , を(3)に代入します。
, , を入れ替えると , の不等式も導けます。
(4)~(6)を辺ごとに足すと(2)になります。
十分性の証明
十分性の証明に入ります。「(4)(5)(6)を導く」→「足して(2)を作る」の部分は割愛。
(2)を使って(1)の左辺を評価します。
の十分性が証明できました。求める は 1 のみです。