不等式から関数決定(2013 インド統計大学)

問題概略

実数から実数への関数  f は次の不等式をみたす。


 |\, f(x+y)-f(x-y)-y\, |\leqq y^2


 f(x)=\dfrac{x}{2}+c(cは定数)であることを証明せよ。


https://artofproblemsolving.com/community/c7h533952p3058145

解説の pdf も作りました。きれいなレイアウトで読みたい方はこちらをどうぞ。

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どんどん置き換え

答えが与えられている珍しい問題です。
ご厚意に甘えて  g(x)=f(x)-\frac{x}{2} とおきます。

 f(x)=g(x)+\frac{x}{2} より

\begin{align*}
&\left|\, g(x+y)+\frac{x+y}{2}-g(x-y)-\frac{x-y}{2}-y \,\right|\leqq y^2\\
&\Leftrightarrow |\, g(x+y) -g(x-y) \,|\leqq y^2
\end{align*}

 x+y=a,  x-y=b とおきます。

 |\, g(a)-g(b)\, |\leqq \left(\frac{a-b}{2}\right)^2\text{ ……(1)}

ここから  g(x)=const. を導けば終わりです。

早稲田の類題

(1 )から定数関数を導く問題は早稲田が出しています。

相異なる任意の実数  a,  b に対して,不等式

 |\, f(a)-f(b) \,|<|\, a-b \,|^2

をみたす関数  f(x) がある。

このとき, a=0 にとり,いったん  b を固定する。
そして  a,  b でつくられる区間を  n 等分し, f(x) が定数関数であることを示せ。

1998 早稲田大学・政治経済学部 第 2 問

同じ方法で今回の問題も解けるはずですが,この方針は自分には不自然なので微分で解きます。

 b を固定して  a=x と置き換えます。

 |\, g(x)-g(b)\,|\leqq \left(\frac{x-b}{2}\right)^2

 x-b\ (\ne 0) で割ると

 0\leqq \left|\,\frac{g(x)-g(b)}{x-b}\,\right| \leqq \frac{|\,x-b\,|}{4}

 x\to b としてハサミウチの原理を使います。

 0\leqq |\,g'(b)\,|\leqq 0\quad \therefore\, g'(b)=0

これが任意の実数  b で成立するので  g(x) は定数関数です。証明終わり。

ノーヒントなら?

ノーヒントでも解けます。

最初の式で  x+y=a,  x-y=b とおいて整理していきます。

\begin{align*}
&\left|\, f(a)-f(b)-\frac{a-b}{2}\,\right|\leqq \left(\frac{a-b}{2}\right)^2\\
&\Leftrightarrow -\left(\frac{a-b}{2}\right)^2\leqq f(a)-f(b)-\frac{a-b}{2}\leqq \left(\frac{a-b}{2}\right)^2\\
&\Leftrightarrow \frac{a-b}{2}-\left(\frac{a-b}{2}\right)^2\leqq f(a)-f(b)\leqq \frac{a-b}{2}+\left(\frac{a-b}{2}\right)^2
\end{align*}

ヒントありの場合と同様に  b を固定して  a=x と置き換えます。
 x-b\ (> 0) で割ると

 \frac{1}{2}-\frac{x-b}{4} \leqq \frac{f(x)-f(b)}{x-b}\leqq \frac{1}{2}+\frac{x-b}{2}

 x\to b+0 としてハサミウチの原理を使うと

 \lim_{x\to b+0} \frac{f(x)-f(b)}{x-b}=\frac{1}{2}

同様に  \lim_{x\to b-0} \frac{f(x)-f(b)}{x-b}=\frac{1}{2} も言えるので,任意の実数  b に対して  f'(b)=\frac{1}{2} です。

 \therefore\, f(x)=\frac{x}{2}+C\quad (\text{$C$は定数})


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