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数学塾variée@吉祥寺

数学塾の中の人の日記

和算の幾何をどう切り崩す?

駿台の東大模試の過去問集を見ていたら,和算の問題が載っていました。三角形に内接する4つの円について,半径の関係式を証明させる問題です。


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「tan を使え」的な誘導がついていましたが,採点講評によるとほとんどの受験生は直接 tan を求めるのではなく,一旦 cos を経由していたそうです。確かに円の中心などを結んで直角三角形を作ると sin や cos の方がきれいな式になります。そこから tan の式を導けるので,こうするでしょうね。

模試の解説ならここで終りなのですが,江戸時代の和算家がどう解いたのか気になったので調べてみました。資料は『日本の幾何 何題解けますか?』(森北出版)と『幾何学大辞典』(槇書店)です。

……調べる前の予想は,2通りあって

  • 受験生と同じ方法で解いている。→「みんな考えることは同じなんだなあ」
  • 算額は少ない文字数で解くことを優先するはず。超絶技巧を凝らしているのではないか?

でした。どっちも違いました。技巧的ではありましたが,私が予想していた方向のものではありませんでした。

『日本の幾何 何題解けますか?』に和算家の解法が載っています。三角関数なんて使いません。

  1. 受験数学でもおなじみの 2√Rr などを使って,辺の長さを平方根であらわす。
  2. 変な面積公式(←おそらく当時としては一般的なもの)に代入。
  3. 強靭な計算力を発揮して2次方程式を導き,それを解く。
  4. 解が2つ出るが,どちらをとるのか説明なし。正三角形の場合を考えて片方の解を捨てたのだろうと予想。
  5. 証明完了。

「すごい」けれども「変」な解法だと思います。現代人にはとても思いつきません。これは200年以上前の問題で,「今とは数学の体系自体が違うんだなあ」と思います。

『幾何学大辞典』には三角関数を使う解法が3つ載っていました。角度という概念をもたない和算家とは違い,現代人は三角関数を使うのが自然でしょう。ただし,その後の変形はかなり技巧的。三角関数の恒等式にかなり習熟していないとできない変形です。大学入試レベルではないですね。

100年以上前の American Mathematical Monthly に載っていたそうです。昔の数ヲタもすごかった!


東京大学への数学 2014―実戦模試演習 (大学入試完全対策シリーズ)

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日本の幾何―何題解けますか?

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