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数学塾variée@吉祥寺

数学塾の中の人の日記

ベクトルで解く(1991 イベロアメリカン)

前回(垂心はオイラー線上にある(1984 Balkan) - 数学塾variée@吉祥寺)の続き。今日は第6章の章末問題の中で一番難しかったものを紹介します。

3点 M, N, H が与えられているとき,三角形ABCを,Mが辺ABの中点,Nが辺ACの中点,Hが三角形ABCの垂心となるように,三角形ABCを1つ作図せよ。作図の正当性も証明すること。

公式解答は

  1. 点Nに関しHと対称な点Rを作図する
  2. Hを通り,直線MNに垂直な直線lを描く
  3. 線分MRを直径とする円Γを描き,lとの2交点のうち,任意の一方をAとする。
  4. 点Mに関しAと対称な点をB,点Nに関しAと対称な点をCとすれば,求める三角形が得られる

というものです。図がないとピンとこないかもしれませんが,最初の「点Nに関しHと対称な点Rを作図する」が既に大技っぽく,「こんなの絶対気づかない」感ありありです。これを鵜呑みにしても次の問題にはつながらないでしょう。自分に引きつける形で理解したいものです。

たとえば,Art of Problem Solving に集う猛者の一人は方べきや三平方を駆使して解いています。力づくで √ を含む式を導いたあと,その図形的意味を考えれば模範解答も納得できるでしょう。
http://www.artofproblemsolving.com/Forum/viewtopic.php?p=831486&sid=3ef2d1e011c868751c3a25008d150a2c#p831486

さて,わたしはどうやったか? ベクトルを使いました。要するに M/N/H から A/B/C を復元する問題なので,まずは関係式をもとめます。外心Oを始点とする位置ベクトルを考えると,

A/B/Cの位置ベクトルをM/N/Hであらわせましたが,残念なことに始点Oがどこにあるのかわからないので作図はできません。

実は上の式は対称点の位置ベクトルの式に似ています。M/Nに関するHの対称点をH1/H2とおくと,

公式解答の第一手はこれですね。B/CがH1/H2の反対側にあることがわかりました。ただ,やはりOの位置がわからないと,作図はできません。そこで


を使います。A/B/C/H1/H2は同一円周上にあり,BH1/CH2はその直径です。図示するとこうなります。


f:id:variee:20140109225413p:plain

あとは答案にまとめるだけ。公式解答とほぼ同じ流れになります(直線l/円Γの作図順は逆でもよい)。いまの高校生の初等幾何の実力を考えると一から十まで幾何で解くのは現実的ではなく,ベクトルを使う解法を示せたのはよかったと思います。


三角形と円の幾何学―数学オリンピック幾何問題完全攻略

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