破産の確率・平面版(2000慶應総合政策)

問題

慶應の過去問を見てたら,破産の確率の平面版みたいな問題をみつけました。

格子状に16個の正方形の小部屋があり,その中に一匹のねずみを入れ,その行動を観察する。

小部屋は図のように番号がつけられ,各小部屋からは隣の小部屋に通路があり,番号 4, 13, 16 以外の小部屋の間では自由に行き来できる。番号 4, 13, 16 の小部屋に一度はいったら決して出ることはできないものとする。

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いま,ねずみは通路の選択を同程度に行うと仮定する。たとえば,番号 5 から番号 6 への通路を選択する確率は 1/3 である。番号 4, 13 の小部屋には餌が置いてあり,ねずみはここに到達すれば餌にありつくことができる。ねずみを番号  n の小部屋に入れた場合,ねずみが餌にありつける確率  P_n を求めたい。


以下略。要するに「 P_1 を求めよ」「番号16の小部屋も自由に行き来できる場合の P1 を求めよ」です。

破産の確率

まず破産の確率について復習。これはランダムウォークの一種です。

コインを投げて表なら A が B から 1 ドル受けとり,裏なら B が A から 1 ドル受けとるゲームをおこなう。はじめ A が  a ドル,B が  b ドルもっていたとして A が破産する確率を求めよ。

wikipedia には独立した項目がありませんが,入試では有名問題です。

http://ja.wikipedia.org/wiki/ランダム・ウォーク理論

1 回のゲームで A が勝つ確率を  \alpha として

 P(n)=\alpha P(n+1)+(1-\alpha)P(n-1)

を解くのが定石です。 P(n) は A が得点  n の状態から破産にいたる確率をあらわします。ゲームに勝てば  n+1 点になり,負ければ  n-1 点になるので,こういう漸化式になります。

「ある状態からはじめて最終的に破産にいたる確率」という極限を相手にするため,漸化式の立て方が独特で初見では普通解けません。

慶應の問題を解く

原題では漸化式を立てさせていますが,対称性を利用すると楽です。各部屋から出発してエサにありつける確率を図のようにおきます。

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部屋 1 からエサにたどりつける確率は部屋 2 に移動した後エサにたどりつける確率に等しいので

 a=\frac{1}{2}b\cdot b=b

他の確率も同様です。

  a=b,\,b=\frac{1}{3}(a+c+d)

 c=\frac{1}{3}(b+e+1),\,d=\frac{1}{4}(2b+2e)

 e=\frac{1}{4}(c+d+f+g),\, f=\frac{1}{3}(e+h+1)

 g=\frac{1}{4}(2e+2h),\, h=\frac{1}{3}(f+g)

この連立方程式からすべての確率が求められます。答えは  104/129


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