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数学塾variée@吉祥寺

数学塾の中の人の日記

昔の難問を見直してみる(1次変換)

数学/大学入試

「行列は2点の像で決まる」の問題探しをしていて,かつての難問に行き当たりました。1982年の東大理系第1問です。

行列 A = [[a, b], [c, d]] によって定まる xy 平面の1次次変換を f とする。
原点以外のある点 P が f によって P 自身にうつされるならば,原点を通らない直線 l であって,l のどの点も f によって l の点にうつされるようなものが存在することを証明せよ。

どこがどう難しいのか

私が受験したのは87年と88年で,試験場でこの問題を解いたわけではありませんが,どの参考書を見ても「超難問」と書かれていたのをおぼえています。「その年の入試の最難問」みたいな位置づけだったかな? 当然,私も解けず,解法を覚えました。

今回,授業に使うつもりで見直してみたわけですが,やっぱり難しい。というか,これは無理ですw

点 P が不動なことから Ap↑ = p↑ が言えます。p↑は A の固有ベクトルで,対応する固有値は1。「もう1つの固有値,固有ベクトルを求めよう」と考えるのが自然ですが,

1. もう1つの固有値が0の場合
2. 1の場合
3. 0, 1以外の場合

の3通りの場合分けが必要で,固有値1が重解の場合が難しいです。固有値が縮退してる場合の処理法は普通の高校生は知らないはずです。
(A-E)q↑ = p↑ をみたす q↑をとればよいことは大学の線形代数の授業で習います。ジョルダン標準形のところです。こちらの記事がわかりやすいです。
ググルナカス、あるいは固有値が重解を持つときの固有ベクトル - あらきけいすけの雑記帳

というわけで,この問題の模範解答は固有値・固有ベクトルを使わない方法です。知りたい人は『東京大学数学入試問題50年』あたりを見てください。

東京大学数学入試問題50年―昭和31年(1956)~平成17年(2005)

東京大学数学入試問題50年―昭和31年(1956)~平成17年(2005)

残念ながら,「行列は2点の像で決まる」の問題例としては使えないですね。

思い出話をもう一つ

私が受験生だった頃,そして塾講師をはじめた頃は不動直線の分類を死ぬほどやっていました。

  • 固有値が1の場合,0の場合
  • 原点を通る場合,通らない場合

この問題があったこともその一因だったのではないでしょうか。しかし,東大ではその後,この系統の問題は出題されませんでした。私がはじめて担当した高3生は「あんなに勉強したのに出なかった……」と言っておりました。