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数学塾variée@吉祥寺

数学塾の中の人の日記

因数分解してしまえ!(式と証明)

『基礎問題精講II/B』を使っての指導中に考えたネタ。等式の証明問題をやりました。

逆は言えるか?

問題1 a : b = b : c のとき



を示せ。

a = bk^2, c=bk を代入するだけの問題で,解くのは大して難しくありませんが,商売柄「逆は言えるか?」が気になったので計算してみました。手計算するのが面倒だったので,maxima 使用です。条件式を入力して factor(%)。結果はこうなります。



「結論からお出迎え」しても解けることがわかりました。

この因数分解は決して無茶なものではありません。条件式の対称性を考えると,b^2 = ac が言えるなら a^2 = bc, c^2 = ab だって言えるはずです。これをもとに因数定理を使えば因数分解できるでしょう。

ためしに ratsimp(%)(mathematica の simplify にあたるコマンド)してみると,通分したときの分母は



となります。次のように項を組み合わせれば因数分解できますね。因数定理に頼らなくても解けることがわかりました。

f:id:variee:20121115101920p:plain

ポイントをまとめると,

  • 結論からお出迎え
  • 対称性の利用
  • ひとつの文字について整理

もっと難しい問題を考えてみよう

前掲の問題は易しくて因数分解の恩恵があまり感じられないかもしれません。次はもっと難しい問題を扱います。

問題2 三角形 ABC において,∠B,∠C の 2 等分線が対辺と交わる点をそれぞれ D,E とし,これらの 2 等分線の交点を I とする。
もし ID と IE とが相等しいならば,三角形 ABC はどんな形であるか。

1956 年の東工大の入試問題です。これは「AB = AC ⇒ ID = IE は易しいが,逆は難しい」という有名問題で,例えば秋山武太郎『幾何学つれづれ草』やテレンス・タオ『数学オリンピックチャンピオンの美しい解き方』に載っています。

幾何学つれづれ草

幾何学つれづれ草

数学オリンピックチャンピオンの美しい解き方

数学オリンピックチャンピオンの美しい解き方

この問題を因数分解で解いてみましょう。まずは角の二等分線の性質を使って,対応するベクトルを求めます。3 辺の長さを a, b, c とおくと角の二等分線の性質から






f:id:variee:20121115101935p:plain
同様にして各線分の長さを求めていくと,


これで準備完了。ID^2 = IE^2 を計算します。内積で出てくる cos は余弦定理で処理できて,a, b, c だけの式になります。


abc(a+b+c) でくくれるのが見て取れますね。数式処理ソフトの力を借りると最後まで因数分解できます。この部分は手計算ではちょっと無理でしょう。



b = c なら二等辺三角形,a^2 - b^2 + bc - c^2 = 0 なら ∠A = 60° が言えます。
途中,数式処理ソフトの力を借りましたが,「両意の合同」という気持ち悪いものを相手にしなくてすみました。

「両意の合同」についてはこちらが参考になります。
4.両意の合同