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数学塾variée@吉祥寺

数学塾の中の人の日記

式の数と未知数の数があわないとき(方程式)

数学/大学入試

旺文社の『基礎問題精講II/B』を使っての指導中に考えたネタをご披露。

受験数学の世界には「比例式は = k とおけ」という定石があります。

問題1
 \frac{b+c}{a}=\frac{c+a}{b}=\frac{a+b}{c} のとき,この式の値を求めよ。

与式を k とおいて分母をはらい,辺毎に足します。
 2(a+b+c)=k(a+b+c)

k = 2 または a + b + c = 0 となり,これを元の式にもどして最終的な答えを得ます。

では,係数がもっと汚かったら?

問題2
 \frac{2a+b}{3c}=\frac{2b+c}{3a}=\frac{2c+a}{3b}=k のとき,実数 k の値を求めよ。

これが本に載っている問題です。分母をはらった
 2a+b=3kc,\, 2b+c=3ka,\, 2c+a=3kb を辺毎に足して「k = 1 または a + b + c = 0」を得るまでは簡単ですが,a + b + c = 0 の場合の k を求めるのは結構面倒。解けない人も多いと思います。

模範解答を見てみよう

模範解答はあっさりしたもので, c = - a - b と第 2 式から b=(3k+1)a,\, c=-(3k+2)a を導いて第 1 式に代入し,k の方程式 3k^2+3k+1=0 を導いています。この解法に間違いはありませんが,「式の数と未知数の数に注意せよ」ぐらいの指導は欲しいところだと思います。

未知数が a, b, c, k の 4 つあるのに対し,条件式は 3 本。未知数の値を決定することはできませんが,1 つの文字で残りの文字を表すことはできます。これを実践したのが上の解答です。

私ならどう解くか

模範解答をなぞるだけじゃつまらないので,自分ならどうするかを考えました。多分行列を使います。欲しいのは k の値であって,a, b, c は消去するべきもの。行列を使って一気に消去します。

\begin{pmatrix}2&1&-3k\\3k&-2&-1\\1&-3k&3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\b\\c\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\end{pmatrix}

a, b, c はどれも 0 ではないので,この式が成り立つには係数行列の逆行列が存在しないことが必要。行列式をとると, (k-1)(3k^2+3k+1)=0 となります。あとは十分性の確認をしておしまい。ただし,この方法は大げさかもしれません。

他の方法はとなると,普通に1つの文字で他の文字を表すことになりますが,やはる行列を使うと思います。私が高校生だった頃,行列は文理共通範囲で「係数が汚い連立方程式は行列で解け」と叩きこまれたものです。

第1式,第2式から

 \begin{pmatrix}2&1\\3k&-2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\b\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}3kc\\c\end{pmatrix}

a, b を c で表して第 3 式に代入。c (≠0) で割れば k だけの式が手に入ります。

「やっぱり理系相手の方がいろいろ話せるな〜」と感じた 1 問でした。

数学II・B 基礎問題精講 四訂版

数学II・B 基礎問題精講 四訂版