数学塾variée@吉祥寺

数学塾の中の人の日記

比は傾き(不等式)

不等式の証明問題についていろいろと。

問題 a_1, a_2, …, a_n および b_1, b_2, …, b_n をすべて正の実数とする。もし,



ならば,


が成立していることを証明せよ。

出典は1997年の東京女子医大です。見かけに惹かれて考えてみました。簡単のため,



とおきます。

まずは素で解いてみる

最初に考えたのは「結論からお出迎え」する解法です。



と同値変形して,引き算します。


ここで与えられた不等式を考えると,i = 1, 2, …, k に対して


が成立しています。これらの和をとると(a)が証明できます。同様に,


も成立し,証明完了。ぱっと見は数学的帰納法を使いそうですが,全然使いませんでした。

図形的解法を考える

実はこの不等式,図形的意味を考えると成立は明らかです。「比は傾き」と考えましょう。

  • b_k / a_k は点 (a_k, b_k) と原点を結ぶ直線の傾き
  • B_k / A_k は (a_1, b_1), (a_2, b_2), …, (a_k, b_k) を結んだ k 角形の重心と原点を結ぶ直線の傾き

大きな傾きをもつ点を加えるたびに原点と重心を結ぶ直線の傾きが増加していくことは明らかなので,



また,重心はつねに n 角形の内部にあるので


このように一応証明できますが,答案として通用するかどうかはわかりません。ほとんどの受験生が頑張って式変形している中,「図形的に考えれば明らか」は認められるのか? 少なくともこういう答案を書くのに勇気は必要でしょうね。

正当化する

すぐ上で述べた解答があやういのは k 角形という得体の知れないものを相手にしているからです。2 点とその中点なら大丈夫でしょう。一般に



が成り立ち,この性質を使って本問を解くこともできます。





これをくり返すと,最後は


となって証明完了です。この解法は計算は楽ですが,発想が難しいのが難点です。