敵は3人ずつ,友人の敵は敵(2017 香港TST)

問題概略

 n 人の委員からなる委員会がある。どの 2 人の委員も友好関係または敵対関係にあり,どの委員もちょうど 3 人ずつと敵対関係にある。また,友人の敵は敵である。 n として考えられる値をすべて求めよ。

https://artofproblemsolving.com/community/c6h1294021p6857837

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実験前の準備

2017 年の香港の Team Selection Test の問題です。

人を点( \circ),敵対関係を実線,友好関係を破線であらわすことにします。

「友人の敵は敵」がわかりにくいので,3人の場合で実験してみます。
人間関係は  2^3=8 通り考えられますが,「友人の敵は敵」ルールをみたすのは 5 通りだけです。
実線が 1 本の三角形は存在しません。

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次に辺の数を数えます。
敵対関係をあらわす実線は各委員から 3 本ずつ出ています。ダブルカウントを考えて,全部で  \frac{3n}{2}本。
 n は偶数です。

小さな n で実験

 n=4 のときはすべて実線(敵対関係)です。

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 n=6 のときもうまくいきます。

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 n=8 のときはうまくいきません。
「実線が 1 本の三角形は存在しない」ルールにより図の A, B, C から 4 本以上の実線が出てしまうからです。下図では例として C からの実線のみ書いてあります。

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これを一般化すると  n\geqq 8 はすべて不適であることが証明できます。

各委員を  \mathrm{P_1} \mathrm{P}_{n} であらわし, \mathrm{P_1} \mathrm{P_2},  \mathrm{P_3},  \mathrm{P_4} と敵対関係にあるとします。

 \mathrm{P_5} \mathrm{P}_{n} n-4 人は  \mathrm{P_1} と友好関係にあるので, \mathrm{P_1} の敵  \mathrm{P_2} と敵対しています。

 \mathrm{P_2} から見ると  \mathrm{P_1} に加えて  \mathrm{P_5} \mathrm{P}_{n} の計  n-3 人は敵です。

 \mathrm{P_2} の敵は 3 人ですから

 n-3\leqq 3\Leftrightarrow n\leqq 6

これは  n\geqq 8 と矛盾します。結局,求める人数は 4 人か 6 人です。


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対数の和の最小値(2013 インド統計大学)

問題概略

 a,  b,  c は 1 より大きい実数である。

 S=\log_a bc+\log_b ca+\log_c ab の最小値を求めよ。

https://artofproblemsolving.com/community/c6h533941p3058122

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底を揃える

2013 年のインド統計大学の入試問題です。
常用対数で考えて  p=\log a,  q=\log b,  r=\log c とおきます。これらはすべて正です。

底の変換公式を使います。

 \log_{a}bc=\frac{\log bc}{\log a}=\frac{\log b+\log c}{\log a}=\frac{q+r}{p}

他の項も同様なので  S は次のように変形できます。

 S =\frac{q+r}{p}+\frac{r+p}{q}+\frac{p+q}{r}
 =\left(\frac{q}{p}+\frac{p}{q}\right)+\left(\frac{r}{q}+\frac{q}{r}\right)+\left(\frac{p}{r}+\frac{r}{p}\right)
 \geqq 2\sqrt{\frac{q}{p}\cdot\frac{p}{q}}+2\sqrt{\frac{r}{q}\cdot\frac{q}{r}}+2\sqrt{\frac{p}{r}\cdot\frac{r}{p}}=6

等号は  p=q=q のとき,つまり  a=b=c のとき成立します。

 \therefore \text{(最小値)}=6

6 文字の相加平均・相乗平均の関係

6 文字の相加相乗でもできますね。

 S =\cdots=\frac{q}{p}+\frac{r}{p}+\frac{r}{q}+\frac{p}{q}+\frac{p}{r}+\frac{q}{r}
 \geqq 6\sqrt[6]{\frac{q}{p}\cdot\frac{r}{p}\cdot\frac{r}{q}\cdot\frac{p}{q}\cdot\frac{p}{r}\cdot\frac{q}{r}}=6

等号はすべての分数が一致するとき,つまり  p=q=q のとき成立します。


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並べ替えてトレミーの定理(2013 インド統計大学)

問題概略

AD は半径  r の円の直径である。
点 B, C は同じ弧 AD 上にあり, AB = BC = r/2, A ≠ C をみたしている。 CD/r を求めよ。
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https://artofproblemsolving.com/community/c6h533950p3058140

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無難に余弦定理

2013 年のインド統計大学の入試問題です。

図のように角  \theta をとって  \triangle\mathrm{OAB} に余弦定理を使います。

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 \cos\theta=\frac{r^2+r^2-\left(\frac{r}{2}\right)^2}{2r^2}=\frac{7}{8}

 \therefore \cos 2\theta=2\cos^2 \theta-1=\frac{17}{32}

次は  \triangle\mathrm{OCD} に余弦定理。

 \mathrm{CD}^2=r^2+r^2-2r^2\cos (\pi-2\theta)=2r^2(1+\cos 2\theta)=\frac{49}{16}r^2

 \therefore  \frac{\mathrm{CD}}{r}=\frac{7}{4}

三角形を並べ替える

左下図のように三角形を並べかえます。AD は直径なので  \triangle\mathrm{ABD} は直角三角形です。

 \mathrm{BD}=\mathrm{AE}=\sqrt{(2r)^2-\left(\frac{r}{2}\right)^2}=\frac{\sqrt{15}}{2}r

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四角形 ABED は円に内接しているのでトレミーの定理が使えます。

 \mathrm{AB}\cdot \mathrm{DE}+\mathrm{BE}\cdot \mathrm{AD}=\mathrm{AE}\cdot \mathrm{BD}

 \Leftrightarrow{} \left(\frac{r}{2}\right)^2+\mathrm{BE}\cdot 2r=\left(\frac{\sqrt{15}}{2}r\right)^2\Leftrightarrow \mathrm{BE}=\frac{7}{4}r

並べ替えで名前が変わりましたが,これが CD です。

 \therefore \frac{\mathrm{CD}}{r}=\frac{7}{4}


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